pha著「ニートの歩き方」特設ページ

質問&エッセイテーマ

・時々ブログのコメントで「ニートじゃないじゃんライターやっているし」などと批判されますが、確かに世間のニート像、いわゆる「親のスネかじり」とは違うように見えます。つまり肩書きと実態の不一致が生じているわけですので、何か別の肩書きを名乗られるのは如何でしょうか?たとえばギークハウスというコンセプトを提案されていることから「アーキテクト」とか。津田大介さんはいまは「メディアアクティビスト」を名乗られていますね。


・本義的なNEETと、現状流通しているニートという言葉、phaさんが考えているニートの定義、あり方みたいなものについて




回答

(※上の二つは別々の方からいただいたお題なのですが、内容がかぶっているのでまとめて回答します。)


 うーん、確かにそうなんですよね。僕が仕事辞めて2年くらいは貯金を食い潰しながら生活していて結構純粋なニートだったと思うんですが、そのうちサイト作ったりとか文章を書いたりとかいろいろやり始めて、そういうので一応今は収入を得て生活しているので厳密なニートの定義からは外れてしまうなあ、と思います。でも労働者か?って言われると、毎日ひたすら惰眠を貪って一日の大半を寝そべって暮らしているし、それもしっくりこないんですよね。「ニート的な毎日だらだらして仕事を求めないような生活」というのを指して、「そんな暮らしでもいいじゃないか」という意味で「ニート」という言葉を使っていたのはあります。

 文章書いてるからライターか、って言われるとそれも違う気がするんですよね。確かに雑誌に文章も書いたりしてるけど、そこでの一ヶ月の収入は2万円くらいなんですよね。ライターとして食えるレベルじゃないし、ライターで食いたいわけでもないし、別にライターというものにアイデンティティを置いてない。今の自分の属性について自分の感覚で言ってみると、15%くらいライターとか物書きで、50%くらいニートで、あとはブログ書いたりとかシェアハウス関係で何かやったりとかそんな感じです。

 まあ言ってみれば100%ニートとか100%社畜とかそういうのも現実にはあんまりないんじゃないでしょうか。本でも書いたことだけど、あんまり仕事をしないフリーランスとたまに働いたりするニートはほとんど変わらない。そうすると肩書きというのは、「本人がどこにアイデンティティを置いているか」というところが重要になってくるんじゃないでしょうか。平日は会社員で週末だけメイドになる女子がいたとして、その人は会社員は仮の姿でメイドが真の姿だと思っていたら、もうその人の肩書きは「メイド」でいいんじゃないか、みたいな。家事をよくやるニートは「ニート」じゃなくて「家事手伝い」なのか、とか、趣味で絵を描いてるニートは「ニート」じゃなくて「画家」や「イラストレーター」なのか、とか、ひたすらゲームをやってるニートは「ニート」じゃなくて「ゲーマー」なのか、とか、そういうことを考えると本当に純粋な100%ニートというのも少ないような気がする。

 「アーキテクト」とか新しい肩書きを造るのもありかもしれないけど、なかなか難しいと思う。新しい肩書きって「ハイパーメディアクリエイター()」的なネタになってしまうことが多いし、個人が独自に作った肩書きが定着してしっくり来ることなんてかなり稀なんじゃないでしょうか。昔、寺山修司が職業を訊かれるたびに「職業・寺山修司です」って言ってたって話があって、変な造語をするよりはそっちのほうがしっくりする気もするけど、そういうのはよっぽど立派な業績を残してないと寒いだけし。

 だからニートっていう単語を最近の僕が使っているのは、「俺はニートだ」っていうよりも、「できるだけ働かないという暮らし方」とか「働きたくないという気持ちを大切にする価値観」とか、そういうのの象徴として使っている感じですね。でも自分の中のニートの割合が昔より減ってきてるのは確かだ。できるだけ働きたくない、ひたすら予定のない毎日をだらだらしていたいという気持ちは変わらないけど、ニートについて語ったり名乗ったりするのもいい加減飽きてきてるし、だから本を書いたことでとりあえずの区切りとして、これからはそんなにニートって言わないと思います。




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