Software Design誌連載「ギークハウスなう」第6回(Software Design 2010年10月号掲載)

インターネットでお金をあげよう


カンパで台湾に行った話

どうも、ニートのphaです。まともに働いていないので基本的にいつもお金がない僕なんですが、こないだ無職のくせに柄にもなく台湾に行ってきました。というのは5月号のこのコラムでも紹介した破滅*ラウンジというイベントが、渋谷での展示が好評だったため関西に続いて台湾でも開催されることになって、それに参加するために行ったのでした。

ただ全然お金がなかったので、ブログで「台湾に行きたいです!誰かカンパしてください!何かお土産送るので!」というエントリを書いたら、ブログの読者の人から全部で約2万4000円(一人当たり1000円〜3000円くらいで10人くらいの人から)を貰うことができ、自分の貯金と合わせて何とか台湾まで行って帰ってくることができた。お金を振りこんでくださった皆さん、改めてありがとうございます。

こんな風にネットで不特定多数に向けて「誰かお金ください」って募集するのは僕は今までにも何回もやっていて、「貯金が尽きた」とか「誕生日です」とか「働きたくない」とか言っては時々お金を振りこんで貰っています。ネットでお金を貰うことについては批判する人もいるけど、結構振りこんでくれる人もいるし、自分で働いて自分で稼ぐだけじゃなくてもうちょっとみんな適当に気分次第でお金を他人にあげたりしたほうが面白い世の中になると僕は思っている。

まあ僕に関しては、何もせずにお金をもらっているというよりは、ブログをいつも書いてるのでそれを見て気に入ってくれた人が支援のつもりでお金を振りこんでくれているという側面はあるんだけど、でも「文章を直接売ってお金に換える」というきっちりした取引ではなく、拘束のないゆるい感じでお金をあげたり貰ったりしているのが、僕も楽だし、現象としても面白いんじゃないかと思う。

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ネットによる総表現者時代

僕がブログでやっているみたいに何かコンテンツをネットで公開することでお金を得るという流れがもっと普及したらいいなと思っているんだけど、ブログ以外のジャンルではどうだろうか。漫画を描く人はネットで読めるウェブ漫画を公開しているし、音楽を作る人はネットレーベルから曲を公開したりしている。pixivを見ればたくさんの絵師がイラストを描いているし、ニコニコ動画には動画職人たちによって毎日大量のクオリティの高い動画が公開されている。今はネットを使えば音楽だって漫画だってイラストだって何だって個人が簡単に公開して人に見せることができる。

しかし、現状ではそのほとんどが無料で公開されていて、ネットでコンテンツを公開してお金を得ている人は一部の例外でしかない。ネットのコンテンツは無料が当たり前になっていてあまりお金を払う習慣が根付いていないし、日本では個人が簡単にネット上で少額のお金を払ったり受け取ったりするシステムがないという理由も大きい。物を売るならネットオークションとかを使えばいいんだけど、音楽だとか漫画だとかのコンテンツはデータであって具体的な実体がないので売り買いが成立しにくいというのもある。漫画や音楽はネットでちょっと読んだり聴いたりしたらそれで満足する人も多いし。ブログはまだアフィリエイトなどの広告をコンテンツの間に挟みやすいからまだマシで、イラストだとか動画だとか音楽だと広告を挟みつつ公開するのが難しいので更に収入は得にくそうだ。

もちろん、ネットに発表した作品が人気になってブログや漫画が書籍化されたり音楽がCD化されたりとかそういう成功例はたくさんあるんだけれど、結局マネタイズするとなるとそういう既存のネット以外の流通経路に乗らないといけないというのはあんまり面白くないなーと思う。そもそもそういう既存の出版業界だとか音楽業界だとかも衰退していっているわけだし、ネットで個人が何かを発表してそれを気に入った人が制作者に直接お金を払うということがもっとスムーズにできないかなあ。

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新しい「カンパ」について

そんな現状においてネットでお金を得るための一つの案として、気軽に応援のような感じでお金をあげたり貰ったりすることが定着すれば面白いんじゃないかなーと思っている。気に入った人に対してシンプルにお金をカンパしたり、半分カンパするような気持ちで何かグッズみたいな物を買ったりとか。

ネットで「ねぎ姉さん(http://negineesan.fc2web.com/)」という変な漫画を発表している小林銅蟲という漫画家がいるんだけど、ネットでお金を得る試みとしてカンパ募集用の漫画をネットで連載していて、そうしたらある程度のカンパは集まるらしいんだけど、でも貰ったカンパで寿司を食ったりすると2ちゃんねるとかで「人の金で贅沢してんじゃねえ」と叩かれたりするらしい。けどそういうのは面白くないと思うんだよね。あげたお金は貰った人がどう使おうが勝手だし、あげた側が貰った側より別に偉いわけじゃない、ということにしないと窮屈だし。

そもそも「カンパ」という言葉には貰った人が何か頑張らなきゃいけないような雰囲気がある。かと言って「寄付」というとちょっと大層な気がするし、見返りを求めず応援のような感じで少額のお金を投げる行為を表す新しい言葉が何か一つ欲しいとですね。今までにある日本語だと「おひねり」なんかが一番近いのかな。

ブログや各種ウェブサービスの発達によって、個人が自由に全世界に向けてコンテンツを発信できるようになったし、また、ネットオークションを使えば個人が簡単に物を売ってお金を得ることもできるようになった。ここまででも物凄く革命的なことだと思うけど、次は音楽だとか漫画のようなコンテンツをネットで発表することでお金を得る手段が整ってほしいですね。発表することができるだけでもとても素晴らしいことなんだけど、そこでもうちょっとお金が動くようになったらかなり世界の仕組みが変わると思う。それにはまだまだシステムの整備が必要だと思うけど、僕はそんな世界を期待しています。ニートとして。

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